賃貸でトイレが流れないときは、まず越水を防ぐことが最優先で、止水栓を軽く締めて電源付き便座はコンセントを抜き、便器周囲を養生して縁から3〜5cm下まで静かに水位を下げるのが原状回復の第一歩になる。賃貸で入居者が自力で行ってよい範囲は、ラバーカップによる圧出、重曹+クエン酸+50〜60℃のぬるま湯の併用、便器用ワイヤー(先端ゴム付き)の軽作業までで、便器脱着や床フランジ交換、高圧洗浄、屋外枡清掃は共用部・建物設備に及ぶため原則管理会社の承認が必要だ。費用負担の基本は、紙の使いすぎや流せない異物投入など入居者起因は入居者負担、老朽化や屋外配管の閉塞、他室と同時逆流のように建物側起因は貸主・管理組合負担が原則となるが、無断で深夜出動を呼び高額作業を承諾した場合は差額が自己負担になることがあるため、症状写真と試した手順を添えて管理会社へ即連絡し、指示と承認を文面で残すのが鉄則である。DIYではラバーカップを排水口へ垂直密着し「押す1:引く3」を10往復×最大3セット、紙系なら発泡30分後にぬるま湯を注いで再度1セットが定石で、異物疑いはワイヤーを曲線に沿わせ軽く回して引き寄せ回収を狙う。熱湯投入、塩素系と酸性の混用、ビニール密閉で強圧、金属ハンガー突っ込みといった行為は便器破損や有毒ガス、釉薬傷を招き原状回復費の対象になりうる絶対NGだ。バケツ1〜2Lのぬるま湯で封水高さを整え流下音が回復すれば一旦OKだが、床が湿る・便器付け根だけ濡れる・夜間にチョロチョロ音がする等はタンク部品や密結パッキン劣化のサインで、型番写真を添えて管理会社経由で部品交換を依頼するのが安全である。業者を呼ぶ場合は写真送付から10分以内に「基本料・作業料・部材・処分・夜間加算・税込」の総額見積をSMSで提示できる会社を選び、到着遅延減額や作業後30〜90日の再発保証、保険書類の発行可否を確認すると費用の不確実性を抑えられる。なお家財保険の破損汚損特約や水濡れ補償、借家人賠償が使えることがあるため、発生時刻・止水・応急処置・原因推定・被害状況を写真で記録し、領収書と併せて保管しておくと自己負担を最小化できる。再発予防は紙を2回に分けて流す、流せるシートや猫砂を投入しない、月1のクエン酸湿布でリム穴とジェット孔を清掃、低水量機種は大の後にぬるま湯1Lを追加、年1で屋外枡を点検という運用を徹底すれば、賃貸でも原状を損なわず、かつ妥当な費用負担でトラブルを収束できる。