がん予防

疾病リスク回避の近道は、生活習慣の改善

誰しもが罹患する恐れのある身近な生活習慣病の1つにがんがあります。決して特別な病気ではありません。
早期発見・早期治療がポイントですが、まずはがんにならないために、日ごろの生活習慣の見直しからはじめましょう。

※「老衰」「不慮の事故」「自殺」 以外はすべて生活習慣病に起因
(平成21年 栃木県人口動態統計〈概数〉より)

昭和の時代から、死因のトップに

 国民の3人に1人はがんで亡くなり、死因の第1位を更新し続けている……。こうした深刻な状況は昭和56年以降からずっと続いています。
死因別内訳の円グラフを見ても分かるように、平成21年における栃木県のがん(悪性新生物)による死亡率は28・0%と最も高く、その死亡数は5000人の大台を超えています。
がんに続く死亡原因の第2位は心疾患( 16・9%)、第3位は脳血管疾患(12・7%)で、生活習慣病の代表的な症例が上位を占める結果となりました。
これらの数字を合わせると、がんを含む生活習慣病による死亡は全体の6割に迫る勢いで、事態の深刻さをうかがい知ることができます。

(栃木県地域がん登録 2006症例より)

男女別のがん傾向。肺、大腸が増加中

 がんの傾向を男女別に見てみると、男性の場合は、1位が胃がん(20・2%)、2位が肺がん(16・5%)、3位が大腸がん(結腸・直腸 16・2%)です。
一方、女性の場合は、1位が乳がん(17・0%)、2位が大腸がん(結腸・直腸 16・5%)、3位が胃がん(13・7%)という結果になりました。
以上の傾向をまとめると、男性に多い肺がんは喫煙が主な原因とされ、女性の場合はこれまでは乳がんが不動の1位でしたが、最近は大腸がんのリスクが急激に高まる傾向にあります。より一層注視しなければなりません。
参考までに、三大死因別死亡率の年次推移のグラフを見れば、県民の死因の傾向が一目瞭然です。特にがん(悪性新生物)はゆるやかなラインを描きつつも、確実に右肩上がりで増え続けています。

五大がんの特徴と検診方法の実際
【肺がん】

肺がんの罹患率・死亡率は、男性は女性の3〜4倍にのぼります。原因としては喫煙が挙げられ、5年相対生存率は最も低く80%を切っています。
肺がんの部位別死亡率(栃木県)をみると、男性は2位、女性は4位です。
[検診方法]40歳以上、年1回。問診、胸部エックス線検査および喀痰細胞診。

【胃がん】

食生活が発症要因の一つとされる胃がんは、最も罹患率が高いがんです。しかし、早期発見・早期治療をすれば治癒する可能性が高いとも言われています。
塩分との相関があるとされ、野菜や果物の摂取によって予防の可能性があるとされています。
[検診方法]40歳以上、年1回。問診および胃部エックス線検査。

【大腸がん】

肉類や脂肪分の多いメニューなど、食生活の欧米化により急増したがんです。主な症状としては、下痢・便秘・血便などがみられ、早期発見の場合は治る可能性が高いがんとされています。
ちなみに、直系の親族に同じ病気の人がいる場合、遺伝により発症のリスクが高いと言われています。
[検診方法]40歳以上、年1回。問診および便潜血検査。

【乳がん】

女性の部位別がん罹患率ではつねにトップ。発症には女性ホルモンが大きく関与し、出産経験のない人や初産年齢が高い場合も発症のリスクが高いと言われています。
30歳以降から急激に発症リスクが高まるのが特徴で、月に1回の触診による自己チェックが早期発見につながります。
[検診方法]40歳以上、2年に1回。問診、視診、触診および乳房エックス線検査(マンモグラフィ)。

【子宮がん】

20〜30歳代の若い女性に急増している子宮頸(けい)がんは、検診でがんになる前の細胞を発見できることが多く、唯一、100%予防できるがんです。
一方、子宮体がんは閉経後の50〜60歳代に多く発症し、自覚症状としては不正出血がありますが、発見しにくいがんの一つです。
[検診方法]20歳以上、2年に1回。問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診。


がんの危険因子のうち、生活習慣に関係するものは、①喫煙②食事③多量飲酒などです。発症を防ぐために、禁煙やバランスのとれた食事を心がけてください。

放っておくと手遅れに。がん検診でリスクを回避

 たばこや飲酒、運動不足や栄養バランスを欠いた食事など、日常の生活習慣にかかわるものが主たる原因となり、正常な細胞ががん細胞に変わることから病状が進行します。
初期段階では自覚症状はほとんどなく、そのまま放っておくと知らず知らずのうちに生命までも脅かすように……。これががんの恐さです。
厚生労働省の調査研究によると、1年前にがん検診を受診した人は、受診しなかった人に比べ、胃がんでは約50%、大腸がんでは約70%ほど死亡率が低下していたという結果となりました。
こうしたデータからも分かるように、がんは早期発見・早期治療が重要です。早期にがんを発見し、早期に治療することで治る可能性が高まり、死亡リスクを格段に減少させることができます。

(がんの統計 2010年版より)

(平成21年 人口動態統計より)

出典/ 平山 雄、計画調査(1966年~1982年)

がん検診受診率、50%超を目指して

 一生のうちに男女とも2人に1人が、がんにかかる可能性があるとされるご時世。早期発見・早期治療のためには、がん検診の受診率を高めることが最重要課題です。
にもかかわらず、栃木県におけるがん検診受診率は20〜30%という低い状況にあり、より一層の普及啓発と受診勧奨が急務となりました。
平成20年3月、県は「栃木県がん対策推進計画」を策定し、予防から医療までの総合的ながん対策をより一層推進。平成24年度までにがん検診(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん)の受診率を50%以上とする目標を掲げています。
また、地元・足利銀行をはじめとする民間企業数社と連携を図り、「栃木県がん検診受診率向上プロジェクト」をスタート。官民共同による県民のがん検診受診率向上に取り組んでいます。

生活習慣病予防の秘訣

がんをはじめ生活習慣病を予防するためには、
禁煙やバランスのとれた食事、適度な運動が不可欠。
そして、早期発見・治療のために、
がん検診を定期的に受診しましょう。

 生活習慣病にならないためには、適度な運動と規則正しい食生活、そして禁煙が基本です。同時に、飲酒は適量、1日7〜8時間の睡眠、適正体重の維持などを心がけてください。
 そして、罹患のリスクを減らすには、早期発見・早期治療が欠かせません。二次予防の意味でも定期的な健康診断を受けてください。特に40歳代以降(子宮頸がんは20歳代以降)はがんの罹患率が上昇傾向にあることをふまえ、当該年代以降の方は早期発見・早期治療のためにも、積極的ながん検診の受診をおすすめします。


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