獨協医科大学医師会 野原 裕 会長

最良の医療提供を目指す

地域の基幹病院として高度な医療を提供する獨協医科大学病院。
医療体制の充実で、かつては助からなかった命が救えるようにもなった。
獨協医科大学医師会の野原裕会長は「日本をリードする最良の医療を目指す」と
志を掲げる。

野原裕会長
地域に根差した医療活動
■獨協医科大学医師会の概要をご紹介ください。

 学内の講師以上の加入希望者で構成されており、平成23年12月1日現在、会員は153人です。医道の高揚、医学教育の向上、医学と関連科学との総合進歩、医師の生涯教育などを目的にしており、
その目的を達成するために、医師の生涯教育や公開の健康セミナー、学術活動など幅広い活動を行っています。
 また、地域の基幹病院として、子ども医療、周産期医療、救急医療、栃木県ドクターヘリなど医療全般にわたって、地元の行政・関係医療機関と連携しながら、地域に根差した医療活動に積極的に取り組んでいます。
 東日本大震災の時には、栃木県内はもとより、宮城県へのドクターヘリ、DMAT隊員の派遣を行ったほか、栃木県・栃木県医師会・全国医学部長病院長会議・私立医科大学協会などの関係機関を通して、医師、看護師、薬剤師、放射線技師などの被災地派遣、支援物資の提供を行いました。ボランティアで参加した会員も多数います。

活躍するドクターヘリ
■医療・健康面からみて課題があればお話しいただけますか。

 栃木県の特徴は脳卒中や心筋梗塞などが大変に多いので、大学病院も特に対応を充実させなくてはいけないと思っています。県のドクターヘリを獨協医科大学病院でお預かりして運用していますが、栃木県内で一番遠い所でも30分あれば行けます。導入後、平成23年12月で420件を超えていますが、ヘリコプターがなければ助からなかった患者さんがいるのです。脳卒中や心筋梗塞は1秒を争いますので、特に栃木県ではドクターヘリが大きく機能していると思いますね。
 しかし、基本的には病気になってから治療するのでなく、先手を打って病気を減らす対策を考えなければなりません。長い年月で身についた生活習慣を変えるのは大変だとは思いますが。

■3次救急を担う立場から県民に向けて呼びかけたいことはありますか。

 3次救急を行う病院が県には5つあります。3次救急には大変な患者さんが来ますので、1次、2次との役割分担が何よりも重要になります。ドクターヘリも患者さんを全部こちらに連れてきたらパ
ンクしてしまいます。できるだけ現地の医療機関で引き受けていただけるとありがたいですね。

医師不足解消に向けて
■医師不足も深刻ですね。

 現在、勤務医は大変過酷な労働条件で働いています。次第に医師が開業指向になり、その結果、さらに過重労働が進み、都市部での無床診療所の乱立、地方での医療崩壊が加速しています。栃木県も例外ではなく、極端な医師不足に陥っています。県内の医師不足に対応するために、獨協医科大学病院から、県内の中核病院を中心に常勤で延べ100人、非常勤で500人くらいの医師を派遣しています。さらに、医学部の定員を拡大しているほか、卒業後、県内に残って仕事をすることを条件にした「地域枠」も増やしました。時間はかかりますが、こうしたことが栃木県の将来の医療の発展につながればと思います。
 女性医師対策も重要です。獨協医科大学では学生の4割近くが女性です。女性が出産や育児で家庭に入ると、その分、医師が減ってしまいます。現場に復帰してほしいのですが、一度家庭に入るとその間に医療が進んでしまい、なかなか復帰しにくいという現実があります。この対策として平成23年4月に「女性医師支援センター」が発足しました。仕事と家庭、子育てのワークバランスを保っていけるよう支援するものです。フレキシブルなフレックスタイムで働けるとか、休んでいる間に進歩した技術に追いつけるようなトレーニングセンターをつくることなどに力を入れ始めたところです

獨協医科大学病院
■地域医療の改善のために取り組んでいることをお話しください。

 大学病院としての活動ということになりますが、産科、小児科の重症な患者さんを受け入れています。総合周産期母子医療センターで、産科・小児科の枠を超え、リスクの高い妊婦、極小低出生体重児に高度医療で対応し、とちぎ子ども医療センターでは高度な総合小児医療を提供しています。自宅で生まれていれば助からなかったような命も救えるのです。がんの治療も、昔は入院しなくてはならなかったものが、薬が発達して通院で治療できる場合が増えてきました。検査でもPETによって早期に発見し、早く対応することで治るがんが多くなりました。

地域との連携を緊密に
■こちらで早期に治療して、自宅に戻って地域の病院と連携しながら、さらに治療を進めることになるわけですね。

 肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がんという代表的な5つのがんについて、地域連携パスを用いた連携診療が始まったところです。普段は近くの先生に診ていただき、何かあった時にはこちらへ来るというようなやり方です。みんなで手分けしてやっていくことが一番大切です。私どもとしては、負担が減る分を、より重症な患者さんに診療時間を振り向けていくことができます。
 さらに今後、患者さんをかかりつけ医に紹介した際に、ここでどのような治療を受けていたか、地域の先生がすぐに分かるような仕組みづくりも進んでいます。ITの活用でデータを持ち歩かなくてもよくなります。
 大学病院として全ての科において、常に日本をリードするような医療レベルをキープして、栃木県民に最良の医療を提供し続けることを目指しています。そういう志を持ってやっているつもりですし、これからもやっていきます。

■健康づくりの視点から栃木県民に訴えたいことがあればお話しください。

 日常生活の中に運動の時間を必ず取り入れてほしいですね。食生活も少しずつ改善するなどして、ワーストから脱却するお手伝いをしたい。もう一つは、最初から大学病院ということでなく、まず近くの先生に診てもらって、その先生から大学病院に行きなさいと言われた時には紹介状をもらって来る、そういう流れが大切です。そうでないと大学病院がパンクしかねないことを理解していただきたいと思います。


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