那須郡市医師会 鈴木 潤 会長

「開かれた医師会」へ努力

県北の2市1町という広い地域を守る那須郡市医師会。
鈴木潤会長は会員の意見を踏まえた開かれた医師会の運営に心を砕く。
また、患者にとっても医師にとっても、病診連携が何よりも重要と力説する。

鈴木潤会長
各種講座など多彩な活動
■那須郡市医師会の活動内容などを教えていただけますか。

 那須塩原市、大田原市、那須町から構成されています。平成23年12月末の会員数は239人です。そのうち開業医や病院長のA会員が100人、勤務医の先生方であるB会員が126人、82歳以上の減免会員が13人です。主な活動は生涯教育の促進、医療連携の推進、救急医療の充実化などのほか、行政や県北健康福祉センターと連携して住民の健康維持に努めています。そのために各種委員会を設置して取り組んでいます。
 市民公開講座は年に1回、テーマを定めて開催しています。平成23年度の参加者は124人でしたが、多い時には200人を超えた年もありました。同時に、健康相談や抹消動脈硬化症の測定、体脂肪の測定など種々の測定も実施
しています。医師向けには医師会主催の生涯教育講座を年に11回ほど開いています。さらに、産業医や介護保険に関する講習会、医療連携体制推進事業に関する研修会、糖尿病、慢性腎臓病に関する講習会、産婦人科会、かかりつけ医うつ病アプローチの強化に関する講習会なども行っています。
 懇談会としては病診連携、県北健康福祉センター、塩谷郡市の医師会も参加している県北救急医療連携協議会、休日等急患診療所の統合に関する懇談会、東日本大震災避難者に対応する対策懇談会などにも取り組んでいます。また、各地のマラソン大会へ医師や看護師を派遣する活動も行っています。

休日は在宅当番で対応
■休日や夜間の医療体制はいかがですか。

 入院を必要としない1次救急は、当医師会が全面的に引き受けています。例えば日曜・祭日など休日の日中は、在宅当番としてわれわれのところで診療します。那須塩原市が2カ所、大田原市が1カ所です。平日や休日の夜間は、黒磯那須地区休日急患診療所、大田原市休日等急患診療所で行っています。入院を必要とするような2次救急の患者さんは、大田原赤十字病院や国際医療福祉大学病院、菅間記念病院、那須中央病院で輪番制で引き受けていて、われわれが手に負えないときはそこに搬送することができる体制になっています。
 課題としては、これはどこの医師会も同じだとは思いますが、救急患者や重症で入院しなければいけないような患者さんの受け入れ態勢が、あまりスムーズにいっていないことです。整備はされつつあるのですが、まだ完全ではありません。行政や健康福祉センターとの一層の連携強化によって、住民の健康管理体制をもう少し整備する必要があると考えています。

大田原市総合文化会館
救急の体制を再構築
■地域住民側の健康上の特徴のようなものはありますか。

 県北なので塩分の取りすぎの傾向は強いですね。健康に関する公開講座などに積極的に参加していただき、健康管理に努めてほしいと思います。

■地域医療改善のために、医師会としてどのように取り組んでおられますか。

 まず病診連携の強化ですね。医療連携パスの使用の促進も必要です。特に強調したいのは、われわれの地域には、開業医、専門医、中核病院、大病院などがそろっていますので、それらの役割分担制を明確にして連携を強めていくこと。それは患者さんのためにもなるし、われわれのためにもなるのです。何か問題があればすぐ病院に紹介し、検査して治療してまた戻ってくるというようになれば、医療費も少なくなります。
 それからもう一つ、各行政や健康福祉センターとの協力です。最近は健康福祉センターでも住民の健康に関していろいろな啓蒙活動などを行ってますので、われわれもそれに協力していきたいと思っています。救急医療体制については、医師不足の現状を受け、体制を見直して再構築しました。制度的には1次から3次までできていますので、さらに運用面での改善が図れればと考えています。

市民講座風景
■今後医師会として予定されている事業などはありますか。

 平成24年7月に大田原赤十字病院が那須赤十字病院に変わります。それを契機に、現在、大田原と黒磯の2カ所で運営している夜間急患診療所が1カ所になります。赤十字病院の中に那須地区広域行政事務組合が設置し、那須郡市医師会が協力する形となります。また、昼間は引き続き在宅当番を残します。
 市民講座は、今後3年間くらいにわたって、肺がんや胃がんなどがんをテーマに実施する予定です。予防接種に関しては、任意の接種を定期接種にすること、ポリオのワクチンを生ワクから不活性化にすることなどを要望しています。少しずつ実現の方向に向かっていますのでありがたく思います。

患者と医師の共同作業
■健康づくりで県民に訴えたいことがあればお願いします。

 健康を維持するためには、ぜひとも一人一運動を実行していただきたい。さらに、いろいろなところで開かれている公開講座などに積極的に参加されて、病気の状態などを知っていただくこともいいと思います。病気を早く見つける健診なども積極的に受診して、自分の病気に合った病院を選んでいただくということですね。もう一つ大切なことは、病気を治すのは医療スタッフだけではなくて、患者さんとの共同作業ということです。患者さんにも自分で病気を治すという意識を強く持ってほしいと考えています。

■那須郡市医師会は広域なので運営も大変ですね。

 一般社団法人那須郡市医師会の下に、任意団体として、大田原地区医師会、西那須野・塩原地区医師会、黒磯・那須地区医師会があります。3地区の会長さんが集まる会合を月に1回開いて、そのご意見をお聞きしながら運営しています。地域住民の状況など、会員の意向をできるだけ吸い上げながら、開かれた医師会を目指しています。


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