栃木県薬剤師会 長野 順一 会長

社会に応える薬の専門家

高齢化社会の進行によって薬剤師の役割も変わりつつある。
高齢者宅などを訪問して、薬に対する不安や疑問に応える訪問サービスもその一つ。
長野順一会長は薬のプロとして社会の要請に対応するために、コミュニケーションの重要性を説く。

長野順一会長
県民向けのイベントも
■栃木県薬剤師会の会員構成や活動目的などを教えてください。

 平成24年4月現在で栃木県内の1170人の薬剤師が加入しています。「日本薬剤師会と協力し、薬剤師の倫理的および学術的水準を高め、薬学および薬業の進歩発展を図り、公衆の厚生福祉の増進に寄与する」ことを目的に掲げています。この目的を達成するために、さまざまな取り組みを行っています。

■一般県民向けのイベントなどもあるのですか。

 毎年10月中旬に全国的に展開される「薬と健康の週間」に合わせ、一般向けの催しとして「お薬相談・展示会」を、宇都宮市内の大型店を会場に開催しています。薬に関する相談や飲み方の工夫、飲み忘れの防止などのほか、現物を持ってきてもらえれば、その薬の内容の解説なども行います。
 子ども向けには、お菓子を薬に見立て、分包機を使って薬が包装されて出てくるまでを見せるなどのイベントもあります。栃木県、県薬剤師会、病院薬剤師会、宇都宮市薬剤師会の共催です。

大切な「おくすり手帳」
■最近、医薬分業がかなり進んできたように思います。薬剤師がおかれている状況はどう見えますか。

 私は昭和38年に薬局を開業し、以来、同じ場所でずっと営業してきました。最近は調剤薬局が増えてきて、私たちのように「OTC(オーバー・ザ・カウンター)薬局」を経営してきた者には、お客様とのコミュニケーションが少なくなってきたように思えて、少しさびしい気がしますね。
 オーバー・ザ・カウンターという言葉が示す通り、カウンター越しにお客様の相談を受けながら薬を渡すというのが私たちのやり方でしたが、医薬分業が進んで、処方箋を持っていけば薬がもらえるようになり、ともすれば事務的なやり取りで済むようにもなってしまいました。
 本来はお客様の話をよく聞き、説明した上でお渡しするべきだと思うのです。県薬剤師会では保険薬局の研修を年に2回、その他会員向けの講習会を年に12回開くなど、自らの研鑚に努めていますが、こうした場で、会員に対して可能な限りお客様とのコミュニケーションを図るように呼びかけています。
 患者さんは医師に薬の説明を求めることには、ややためらいがあるようです。その点、薬剤師は敷居が低く、気軽に相談できる雰囲気があるとの声をよく聞きます。薬剤師はこうした立場をうまく活用してほしいですね。また、県民の皆さんには、気軽に薬の相談ができる「かかりつけ薬局」をぜひ持っていただきたいと思います。
 こうした中で威力を発揮するのが「おくすり手帳」です。手帳を発行してもらった薬局を継続して使う傾向が強くなるので、そこが自然なかたちで「かかりつけ薬局」になっていきます。この手帳があれば必ずしも調剤薬局でなくても、正しい薬を処方することができます。

栃木県薬剤師会館
在宅診療が進行する中で
■薬科大学が6年制になって、初めての卒業生を送り出しましたね。

 5年生の履修時に、病院と薬局で半年ずつの実習が組み込まれました。これをパスしないと6年生になれません。厳しい国家試験もありますから、今後さらに優秀な人材が輩出されるものと期待しています。

■薬剤師から見て健康づくりへの課題はどんなところにあると思いますか。

 高齢化社会が進行する中、薬剤師は高齢者に薬をお渡しする時には、注意を払う必要があります。お年寄りは複数の診療科にかかり、薬も多種類にわたります。薬剤師の立場から、飲み忘れや誤った飲み方を防ぐための取り組みを進めなければなりません。
 今後、在宅診療がますます進んでいくと思われます。その中でも特に独り暮らしのお年寄りの場合、病院からどういう薬をもらっているのか、チェックが難しい面がありますのでより注意が必要です。ここでも有効な手段となるのが「おくすり手帳」です。また、薬を1回分ずつ小分けする「一包化」するような工夫もしなければなりません。お客様とのコミュニケーションが何よりも重要です。

薬剤師の訪問サービスをPRするチラシ
災害で薬剤師が果たす役割
■東日本大震災を経験して、栃木県と県薬剤師会の間で「災害時の薬剤師派遣に関する協定」が締結されましたね。

 東日本大震災の際に、医師をサポートするかたちで薬剤師が被災地で大きな力を発揮しました。正直、当初は災害現場で薬剤師が役に立つのかという疑問の声もあったのですが、実際に医療活動を行う中で、医師の間から「薬剤師がいてくれて大変助かった」と高く評価する声が挙がりました。医師、看護師、薬剤師がチームを組んで、三者の連携がうまくいき、的確に対応することができました。この結果、薬剤師の存在がクローズアップされることにもなり、今回の協定締結につながったのです。
 実は「おくすり手帳」は東日本大震災の時にも大変効果を発揮しました。医薬品が不足している中で、手帳のおかげで全く同じものがない場合でも、似た効用のある薬を出すことができました。

■今後、県薬剤師会としてどのような方向に進んでいくべきと思われますか。

 先ほども述べたように、今後ますます進むと思われる在宅医療への対応です。
特に高齢者の一人ひとりにきちんと薬がゆきわたる体制をつくらなければなりません。そのためにもおくすり手帳の徹底が必要です。
 地域では医師、看護師、介護士、薬剤師が提携していかなければなりません。患者さん・介護スタッフと医師との〝架け橋〟となる薬剤師の在宅訪問については、県内では栃木地区で先進的な試みがなされていて、モデル地区になりつつあります。

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