女性の健康

心身ともに健康である秘訣は、ホルモン
バランスにあり

女性らしくしなやかに、健やかに生きるために、
女性特有のがんのほか、日々の健康を左右する「女性ホルモン」に着目。
思春期から老年期まで、ライフステージごとに注意したい
ヘルスケアのポイントを紹介します。

女性の健康とホルモンバランス

 月経周期に深く関係し、妊娠・出産に備えるための体づくりに欠かせない物質が女性ホルモンです。
卵巣から分泌される女性ホルモンは2種類あり、その役割を大きく分けると、1つは体の健康を守る「エストロゲン」、もう一つは妊娠をサポートする「プロゲステロン」があります。
意外と知られていないことかもしれませんが、この女性ホルモンは、骨をはじめ皮膚や毛髪、脳や血管のほか、自律神経のバランスを保つなど、心身の健康を維持するためにも欠かせません。
女性ホルモンはライフステージごとに増減し、その時々に与える心身への影響は大。ホルモンバランスは「健康のカギ」といえそうです。
ここでは、女性特有の病気である「乳がん」「子宮がん」について触れるほか、女性ホルモンが大きく影響する「骨粗しょう症」「更年期障害」などについて解説します。

思春期

 女性ホルモンの分泌が高まる小学校高学年ごろは、骨芽細胞が活性化して骨量が急増。肉体的・精神的にも「少女」から「女性」へと成長し、20歳ごろに全身の骨量は最大に達する。

成熟期

 卵巣や子宮の機能が成熟し、体の健康を守る「エストロゲン」と妊娠をサポートする「プロゲステロン」が盛んに分泌される。妊娠・出産を迎えるこの時期は、一生涯で最も女性ホルモンの量が安定する。

更年期

 女性の体の大転換期ともいえるこの時期は、40歳を過ぎたころから次第に卵巣機能が低下し始め、同時に女性ホルモンの量も減少。「更年期障害」と呼ばれるさまざまな不調、症状が心身ともに生じる。

老年期

 閉経を迎えると女性ホルモンの量は急激に減少。骨の吸収を抑える働きが弱くなり、骨量の減少をもたらす。「閉経後骨粗しょう症」と「老人性骨粗しょう症」の2つがあり、65歳以上の女性のおよそ半数がいずれかの骨粗しょう症とされる。

年々増え続ける乳がん患者

 日本女性の18人に1人が罹患するとされる乳がん。エストロゲンとの関係性が指摘される病気の1つで、30代からリスクが上昇する傾向にあり、特に30〜64歳までの女性のがんによる死亡原因のトップとなりました。
特筆すべきは、日本における乳がん患者が年々増え続けていることです。原因の一つには検診受診率の低さが挙げられます。早期発見であれば治癒する可能性の高い病気であるにもかかわらず、検診を受ける人の割合が依然として低いのが現状です。
ちなみに、本県の乳がん検診受診率は32・7%(平成21年度 県民健康・栄養調査)で、前回調査値より8ポイント近く上回る結果となりましたが、目標値である受診率50%以上にはまだまだ及びません。
早期発見のためには、定期的な検診受診のほか、月1回のセルフチェックを欠かさず行ってください。

乳がんのリスク要因チェック

□ 40歳以上である
□ 初産年齢が30歳以上(未婚も含む)
□ 授乳経験がない
□ 初経年齢が11歳以下、または、閉経年齢が55歳以上である
□ 標準体重より+20%以上の肥満である
□ 乳腺疾患になったことがある
□ 家族や親戚の中に乳がんになった人がいる
□ たばこを吸う習慣がある
□ 毎日のように飲酒する習慣がある

検診を受ければ予防できる子宮がん

 子宮がんには「子宮頸(けい)がん」と「子宮体がん」の2種類があります。
子宮頸がんは子宮の入り口に発生し、初期は無症状のがんです。30歳代〜40歳代で多く診断され、最近は特に20歳代の増加が目立っています。
「子宮がん検診」とは一般的に、この子宮頸がんを発見するための検査です。初期段階では自覚症状がないため検診を受ける以外に早期発見の方法はなく、検診で前がん状態の細胞を発見することができれば高い確率で予防できるがんです。
一方、子宮体がんは子宮の奥に発生します。50歳代〜60歳代で多く診断され、自覚症状としては不正性器出血がみられます。
ちなみに、本県の子宮がん検診受診率は33・1%(平成21年度 県民健康・栄養調査)で、前回調査値より9ポイント近く上回る結果となりましたが、さらなる受診率向上が望まれます。

〝沈黙の病〟とされる 骨粗しょう症の恐さ

 加齢にともない骨の量(骨密度)が減ってスカスカになってしまう病気を骨粗しょう症といいます。
男性・女性にかかわらず発症しますが、特に女性に多くみられる傾向があり、ある調査によると、実に65歳以上の女性のおよそ半数が骨粗しょう症該当者といわれています。
なぜ高齢の女性に多いのでしょうか。その理由はこうです。人間の骨はつねに新陳代謝を繰り返していますが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。しかし、閉経にともなってエストロゲンの分泌量が減っていくと新陳代謝のスピードに追いつけず、カルシウムが溶け出すのを抑制しにくくなり、結果として骨がもろくなってしまいます。
結果として女性は、加齢と閉経という2つの側面から骨粗しょう症のリスクを背負っていることになります。
自覚症状がほとんどない骨粗しょう症は、“沈黙の病”とも呼ばれます。食事や運動などで、罹患のリスクを少しでも回避したいものです。

骨粗しょう症とは

①カルシウムを積極的に摂取
 骨量の減少を抑えるためには、1日800mg以上のカルシウムの摂取が目安。同時に、カルシウムの吸収をよくするためには、ビタミンDの多い食品との組み合わせがポイントです。

②日ごろの運動で骨を丈夫に
 こまめに体を動かすことを心がけましょう。軽いジョギングやウォーキング、日々の散歩などで骨に適度な負荷をかけると、骨量の減少を抑えることができます。

③日光浴でビタミンDをアップ
 適度な日光浴は、体内のビタミンDを増やしてくれます。

④喫煙や過度の飲酒は御法度
 喫煙や過度の飲酒は、摂取したカルシウムの吸収を減らすほか、体内からカルシウムを排泄しやすくします。

体の転換期に起こる女性の更年期障害

 更年期障害もまた、女性ホルモンと密接に関わっています。いわゆる「更年期」に差しかかると卵巣の機能が次第に衰えはじめ、女性ホルモンが徐々に低下。結果として、心身ともにさまざまな体調不調を自覚するようになります。
更年期とは女性の体の転換期であり、平均すると閉経を挟んで42歳〜56歳ごろまでに起きやすいとされています。
以下の症状を自覚したら要注意。我慢せずに速やかに、婦人科等の医療機関を受診してください。早めに手を打つことが更年期の健康管理の秘訣です。
1 顔がほてる
2 汗をかきやすい
3 腰や手足が冷えやすい
4 息切れ、動悸がする
5 寝付きが悪い、また眠りが浅い
6 怒りやすく、すぐイライラする
7 くよくよしたり、憂うつになる
8 頭痛、めまい、吐き気がよくある
9 疲れやすい
10 肩こり、腰痛、手足が痛む

ちょっと気になる医療のはなし
女性の「うつ」は男性の2倍。ホルモンバランスが大きく影響!?

 WHO(世界保健機関)の報告によると、全世界のうつ病患者のうち、女性患者は男性患者の2倍もいるそうです。詳細な理由はまだ解明されていませんが、ホルモンバランスが影響していると考えられています。女性の場合は月経、出産前後、閉経前後など、ライフステージごとに女性ホルモンの分泌量が変化するため、ホルモンバランスと深く関連する「うつ」を発症しやすいと考えられています。また、職場などの人間関係や過重労働、仕事と家庭の両立、育児の負担など肉体的・精神的なストレスから精神のバランスを崩すこともあります。疲れたと感じたら早めに休息をとるなど、ストレスを溜めない生活習慣を心がけましょう。

歯の健康と生活習慣病

一見すると無関係に思える「歯の病気」と「生活習慣病」。
しかし、最近の研究結果から、歯や口腔の病気が脳卒中や
心臓病など全身の健康に影響を及ぼすことがわかってきました。

 歯や口腔の衛生は、エチケットの問題だけではありません。口の中を汚れたままにしておくと悪性の細菌が繁殖し、粘膜や血液などを介して体全体に悪影響を及ぼします。
 口腔機能が低下すると体力や免疫力が低下するばかりか、糖尿病や肺炎、脳卒中など、生命の危機に直結する重篤な病気にかかりやすくなります。
 このほかにも、湿疹などの皮膚の病気、角膜炎などの目の病気、神経痛・リウマチなどの神経の病気など、歯や口腔の病気は全身に影響します。原因不明の病気が歯や口腔の病気と深く関連している場合もあります。
 こうした状況を受け、栃木県は平成23年4月に、「栃木県民の歯及び口腔の健康づくり推進条例」を施行。県民の歯と口腔の健康を守る取り組みを本格スタートさせました。

歯周病菌と関係のある主な病気等

心臓病:歯周病が進行すると、心筋梗塞や心内膜炎をはじめとする心臓病にかかりやすくなります。
糖尿病:糖尿病が悪化するにつれて細菌に対する体の抵抗力が低下。その結果、歯周ポケットの中の細菌が増加し、歯周病が急激に進行します。一方、歯周病の治療を行うと血糖値コントロールが改善され、糖尿病の進行が食い止められることがわかってきました。
誤嚥性肺炎:誤嚥(ごえん)とは、本来は食道に入るべき食べ物やだ液の一部が、気道内に入り込んでしまうこと。口腔に細菌がある場合、誤嚥とともにその細菌が肺の中に入り込み、肺炎を起こすことがあります。
妊娠トラブル:妊娠すると女性ホルモンの分泌バランスに変化が生じ、生活習慣の変化等も相まって、歯周病にかかりやすくなります。妊娠中に歯周病が進行すると、早産や低体重児出産の原因になることがあります。


このページの先頭へ