糖尿病予防と重症化防止

適正な食事、適度な運動が予防の最善策

放置しておくと網膜症や腎不全などの合併症を引き起こしたり、脳卒中や心臓病などの原因となることも。
予防には日ごろの生活習慣(適正な食事、適度な運動)を見直すほか、定期的な健診による早期発見が要です。

年々増加する患者数、県民の健康に危険信号が

 平成21年度の県民健康・栄養調査によると、「医師から糖尿病と言われたことがある者」の割合は男性が13・6%、女性が7・6%でした。
50歳代以下では男女ともに、前回調査時より低い値となりましたが、逆に男性の60歳代と70歳以上の割合が急激に増加。なんと約4人に1人が医師から糖尿病と言われたことがあると回答しています。
気になるのは、糖尿病患者のみならず、その予備群がじわじわと増加していること。男女とも調査後の約5年間でほぼ倍増するなど、すでに危険信号が点った状態となりました。
ちなみに、全国を対象とした国民健康・栄養調査結果(平成19年)では、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人(予備群)」は、全国で約2210万人もいることがわかりました。約10年前と比べるとおよそ1・6倍、840万人も増えているというから驚きです。

(平成21年度 県民健康・栄養調査より)

放置すると高まる合併症の危険性

 糖尿病とは、すい臓から分泌されるインスリンが不足したり、その働きが低下することで血液中のブドウ糖(血糖)が多くなってしまう病気で、一度罹患してしまうと、生涯を通じて治療が必要となります。
主な原因は、高カロリー食中心の食生活や運動不足などで、思い当たる節のある人が多いかもしれません。
糖尿病は自覚症状が乏しいため、健診で見つかることが多い病気の一つで、そうした病状の特徴が患者数急増の大きな要因になっていると思われます。
治療をせずにそのまま放置しておくと、やがては眼・腎臓・神経などの毛細血管や脳・心臓などの大血管が動脈硬化を起こし、さまざまな合併症の危険性が高まります。
合併症を引き起こすと、慢性腎不全から人工透析が必要になったり、網膜症による失明、手足の壊疽(えそ)になるリスクが高まるなど、とても恐い病気であることを知っておいてください。
ちなみに、栃木県の透析患者数は右肩上がりで増え続けており、そのうち、糖尿病性腎症が原因の患者は約40%に上ります。

糖尿病の合併症の1つである慢性腎不全になると、人工透析が必要となる場合も。
栃木県の透析患者数は年々増え続けていますが、その中で糖尿病性腎症が原因の患者の割合は約40%です。

(財団法人 栃木県臓器移植推進協会より)

 糖尿病の初期は自覚がなく、治療しないで放置しておくと、眼・腎臓・神経などの毛細血管や脳・心臓の血管などの大血管が動脈硬化を起こし、いろいろな合併症を引き起こします。合併症を引き起こすと、慢性腎不全になり人工透析が必要になったり、網膜症による失明、手足の壊疽などになる場合があります。糖尿病といわれたら治療を継続することが大切です。

歯の健康と糖尿病の深い関係

 糖尿病患者が歯周病を治療すると、口腔の衛生状態が良好に保たれ、結果として血糖コントロールが改善されることがわかってきました。重症化防止には食生活の改善や適度な運動のほか、口の中の衛生管理も欠かせません。かかりつけの歯科医を定期的に受診し、アドバイスを受けてください。

県民の治療状況は大きく改善傾向に

 先の県民健康・栄養調査から、糖尿病と言われたことがある者の治療状況を見てみると、男性が52・9%、女性が69・6%で、前回調査時よりも13〜18ポイント程度も改善し、また、全国と比較しても高い割合を示していることがわかりました。
大変喜ばしい状況といえますが、そうした中で気になるのは、治療せずに放置している人も少なくないという事実です。男性で2人に1人弱、女性で10人に3人程度の割合で未治療者が存在しています。

糖尿病予防には生活習慣の改善を

 糖尿病の自覚症状としては、その多くが「のどがかわく」「だるい」「疲れやすい」「尿の量が多くなった」「体重が減ってきた」「手足の感覚がない」などの変化がみられます。
しかし、ここで油断してはならないのが、30歳代以降に発病する糖尿病についてです。この場合、自覚症状のないケースが多いため、特に注意しなければなりません。
そもそも糖尿病の原因とは何なのでしょうか。第一に考えられるのは、「常に食べ過ぎ」「運動不足」「太りすぎ」などです。不規則な食生活や運動不足が直接の原因で、突き詰めれば生活習慣に起因していることがわかります。
ゆえに、糖尿病の予防には生活習慣の改善が近道です。油料理や肉類の脂身の取りすぎ、食べ過ぎに注意するほか、食べ方や食材の工夫など、栄養バランスについて正しく理解し、実践することが何よりも大切です。
同時に、ストレスをためないよう配慮し、生活の中に適度な運動を取り入れてください。

糖尿病トピックス

「新診断基準を採用。1回の検査で診断可能に」

 平成22年7月、糖尿病の診断基準が11年ぶりに改訂され、新たに「ヘモグロビンA1c 6.1%以上」(JDS値)が追加されました。
 改訂される以前は、初回検査と再検査の最低2回の診断が必要でしたが、ヘモグロビンA1cと血糖値の両方が糖尿病型であれば、初回の検査で糖尿病と診断できるようになりました。
 このヘモグロビンA1cを診断に用いることで、さらなる早期発見・治療が促進されることが期待されています。

定期的な健診による早期発見がカギ

 糖尿病に代表される生活習慣病の発症と重症化を防止するためには、「特定健康診査・特定保健指導」などの定期的な健診がカギとなります。
特定健診は、生活習慣病の発症ならびに重症化を予防するため、生活習慣の改善が必要な人を早期に発見し、保健指導を行うというもの。
対象者が生活習慣を見直し、改めることで、生活習慣病になる前の段階で食い止め、より健康な状態に戻すことを目的としています。
そのため、年1回の特定健診は必ず受診してください。自覚症状のほとんどない糖尿病の予兆を早期に発見し、生活習慣を見直すことで、恐ろしい合併症を回避することができるからです。

糖尿病予防のための心がけ6カ条

1 日常生活の中で体を積極的に動かそう
2 定期的に運動することを心がけよう
3 規則正しい生活を心がけよう
4 ストレスはなるべく発散しよう
5 禁煙を心がけよう
6 定期健診を受けよう

糖尿病予防のための食事7カ条

1 食事は主食、主菜、副菜をそろえて
2 朝昼夜3食きちんと食べる
3 腹8分目で食べ過ぎない
4 ゆっくり食べる
5 夕食は軽めに
6 間食、お酒は適量で
7 野菜、海草、きのこ類をたっぷりと、脂肪分は控えめに

歯周病と糖尿病。2つの病気の関係性

 最近、糖尿病の重症化防止という観点から、歯周病との関係性がクローズアップされてきました。
歯周病は糖尿病の合併症の一つであり、糖尿病が進行すると歯周病も悪化することがわかっています。その一方で、歯周病を治療すると血糖コントロールが改善されることがわかってきました。
つまり、糖尿病の重症化防止のためには、食生活の改善や適度な運動のほか、口の中の衛生管理も欠かせません。かかりつけの歯科医を定期的に受診し、アドバイスを受けるなど、口腔衛生の面からも重症化防止に努めたいものです。

適正飲酒の心得

心と体の健康を考慮し、適正飲酒を心がけたいもの。
飲み方のポイントや適度な飲酒量など、
お酒との上手な付き合い方を学びましょう。

 本来、お酒とは楽しいもの。適量の飲酒は心身ともにリラックスさせ、他人とのコミュニケーションを円滑にするといった側面があります。その反面、大量に摂取するとアルコール依存症やさまざまな肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)やがん(特に食道がん)など、命にもかかわるさまざまな疾患を引き起こす恐ろしい側面も持っています。また、たとえ飲み過ぎでなくとも、糖尿病や胃潰瘍の原因となったり、症状を悪化させる場合もあります。
 平成21年度の県民健康・栄養調査によると、男性の30歳代〜60歳代で、前回の調査時に比べて、多量飲酒者の割合が高い値を示しました。常日ごろから「飲酒と健康」の関係性に注意を払い、適正飲酒を心がけてください。

お酒と楽しく付き合う10カ条

1 談笑し 楽しく飲むのが基本です
2 食べながら 適量範囲でゆっくりと
3 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
4 つくろうよ 週に2日は休肝日
5 やめようよ きりなく長い飲み続け
6 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
7 アルコール 薬と一緒は危険です
8 飲まないで 妊娠中と授乳期は
9 飲酒後の 運動・入浴要注意
10 肝臓など 定期検査を忘れずに

(社団法人アルコール健康医学協会より)

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