下都賀郡市医師会 石井 重利 会長

生涯保健活動で地域貢献

下都賀郡市医師会が運営する医師会病院は古い歴史を持つ。
また、同医師会は保健活動などを通して地域住民の健康を守り続けてきた。
複雑化する医療の現場にあって、石井重利会長はチームを組んで取り組むことの重要性を訴える。

石井重利会長
3つの「わ」を掲げて
■下都賀郡市医師会の活動内容などを教えてください。

 会員は160人余りです。栃木市、壬生町、岩舟町の1市2町がエリアになっています。対外的には地域住民のニーズに応えた医療提供体制の整備、地域住民の生涯を通じた健康増進支援と啓発を目的に据えています。
 対内的には会員一人ひとりの意識改革と士気の向上、さらに、郡市・地区医師会の提言・発言力、情報発信力、地域の問題の解決能力、組織力など、医師会の総合的な「力」の向上を目指しています。このため私は3つの「わ」、すなわち対話、コミュニケーションの「話」、医療連携・ネットワークの「輪」、チーム医療・他職種協働の「和」をスローガンに掲げて取り組んでいます。

■医師会で病院を経営されていますね。

 付属事業として医師会病院、検診検査センター、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所の運営を行っています。医師会立の病院としては日本で第1号の病院です。訪問看護ステーションは、通常、民間の場合は、自分の病院の患者さんを扱うのですが、ここのステーションは公的な面を持っていて、広く会員のニーズに応えて積極的に活動しています。そのほか、居宅介護の相談を受けたり、検診検査センターを備えているのも、郡市医師会では少ないと思います。
 しかし、病院は老朽化が進んで深刻な問題になっています。改修をしながらの運営となると蓄財も難しいし、医師や看護師の確保も大変厳しい。下都賀総合病院、とちの木病院も同じ状況で、統合再編の話の背景にはそうした問題もあるのです。

下都賀郡市医師会病院
開業医が輪番制で初期救急
■地域住民の健康づくりの啓発活動にはどのように取り組まれていますか。

 医師会の目的は基本的に地域住民の健康と命を守ることにあります。公益性をもっとアピールしていく必要があると思います。年に1回は必ず市民公開講座を開いています。テーマとしては生活習慣病や喫煙など一般的なものになりますが、そうした機会を通じ、学術的なものでなく身近なものとして、医師会の活動や地域医療に関心を持ってもらうことが必要です。

■医療連携についてはどのようにお考えですか。

 10年、20年先を見据えた、持続可能な地域医療の再生を考えていく必要があります。その中で重要になるのが医療連携です。これは医師だけの問題でなく、すべての医療関係職種がかかわってきます。オール下都賀的なチームを組んでやっていかないと力になりません。
 その原点になるのは救急医療です。当医師会では、開業医が輪番制で初期救急の栃木地区急患センターを運営してきました。これをさらに充実させていく必要があります。こうした取り組みが、疲弊していると言われている2次、3次の勤務医の先生たちの負担を軽減することにつながります。開業医の集まりが努力している姿を見せることで、市民にも勤務医にもメッセージとして伝わるのではないでしょうか。しかし、一方で地域の病院の診療科がどんどん縮小していく現実もあります。われわれ医師会は提言集団として積極的に発言していかなければならないと思います。

マップを作って診療所の機能を発信
連携体制づくり進める
■在宅医療も課題になっていますね。

 かかりつけ医、訪問看護師、ケアマネージャーの三者の連携が何よりも大切です。今、少しずつそのネットワークづくりをやっているところです。お互いに顔を合わせてコミュニケーションを図るところから始まります。かかりつけ医、診療所の機能向上とその充実については、幅広く総合的に診られる診療能力をどう身につけ、維持していくかということ。生涯教育の中で医師会がやらなくてはならない課題です。
 一人でできることには限度があります。チーム医療、チームケアが必要です。本来なら急性期、回復期、慢性期、療養病床、老人保健施設、在宅などの切れ目のない医療提供体制があるべき姿で、今やろうとはしていますが、現状は不十分な体制の状況です。

■患者としても考えなければならないことがありますか。

 医療は本来は公共財だと思います。それが今は消費財になってしまっています。コンビニ受診と言われ、大量消費で年間30兆円以上もの医療費がかかっています。患者側もルール、マナーを心得ていただいて、医療を大切に使ってもらいたいと思います。われわれ医療側も無秩序・無制限な診療は避けなければなりません。風邪で大学病院に行くなどとんでもない話で、まず開業医にかかってもらう。役割分担を明確にし連携していくことです。患者さんにもわれわれにも求められている課題ですね。経営的に見ても大学病院や大規模病院に患者が集中してしまって、中小病院、診療所は危機的な状況で、地域から中小病院が消えていってしまっています。

生涯の保健活動にかかわる
■そのためにも医師会として生涯保健活動の充実や啓発に取り組んでおられるわけですね。

 生まれると母子保健・乳幼児保健、学校に入れば学校保健、勤めれば産業保健、年を取れば高齢者保健というように、すべての保健活動にわれわれ医師会がかかわっているわけです。このあたりの重要性がまだあまり知られていないのではないでしょうか。
 感染症対策にしても、マスク一つで新型インフルエンザを水際で食い止める努力をしたのは、地域の開業医なのです。ロタ・ノロウイルス、結核なども重要な問題です。子宮頸がん、ヒブ、小児用肺炎球菌という3ワクチンの定期接種などもわれわれから提言していく必要があります。がんにしても子宮頸がんワクチン接種と禁煙を徹底すれば相当に予防ができるのです。われわれは診療・治療だけでなく、保健活動を通して地域住民の健康づくりに努力しています。
 少子化の時代に子どもたちをどう守っていくのか、国家的な課題でもあり家庭の責任でもあります。将来に向けてぜひとも元気な子どもたちを育てていかなければなりません。


このページの先頭へ