脳卒中・心臓病

早期発見・早期治療をキーワードに積極的な健診受診を

脳卒中による死亡のワースト上位を占める栃木県。
肥満者の割合が高いことや食塩の摂取量が多いこと、運動習慣のある人が少ないなどの実態が明らかになりました。
県民総ぐるみによる脳卒中対策が急務です。

多くの健康課題を抱え、生活習慣の見直しを

 平成21年度の県民健康・栄養調査から、県民の健康を推し量ると、以下の課題が浮かび上がってきました。
①男性の肥満者の割合が、ほとんどの年代で急増している
②食塩摂取量は減少傾向にあるものの、いまだに全国値よりも高い
③高血圧や糖尿病既往者が増加している
④運動習慣のある者の割合は増加傾向にあるものの、全国値よりも低い
このように多くの課題を抱えているわけですが、結果として、他県より脳卒中や心臓病をはじめとする生活習慣病による死亡が多いという現状と結び付いています。
医師から高血圧と言われた者の割合では、男性の場合は50歳代以降のすべての年代で、女性の場合は50歳代と70歳以上の年代で増えています。男女とも50歳代以降は特に、脳卒中や心臓病のリスクに注意しなければならない年代であるにもかかわらず、増加傾向にある点が心配されます。
ちなみに総数で見ると、男女とも前回の調査時に比べて2%程度増加しているという結果になりました。まさに県民の健康は赤信号状態で、生活習慣の見直しが急務です。

知っておきたい脳卒中の種類

脳内出血:脳の血管が破れて出血を起こした状態
くも膜下出血:脳を覆っているくも膜と、脳の表面の間にある血管のこぶ(動脈瘤)が破れて出血を起こした状態
脳梗塞:動脈硬化などが原因で動脈が狭くなったり、動脈や心臓にできた血の固まりが脳の動脈に流れ込み、血管が詰まってしまう状態
一過性脳虚血:脳の血液循環が悪くなり、めまいや失神、発作などを起こす。脳梗塞の兆候とされる
高血圧性脳症:高血圧が重症化すると脳の内部にむくみが起き、特有の症状を起こした状態

発症予防のために心がけたいこと

 脳卒中や心臓病をはじめとする生活習慣病は、日常生活のあり方と深く関連していると考えられています。
健康の保持・増進を図るためには、まずは運動習慣の定着や食生活の改善、禁煙の実践といった健康的な生活習慣の確立が欠かせません。以下、発症予防のポイントを紹介します。
高血圧症は脳卒中の大きな要因です。予防のために塩辛い食べ物は極力控え、塩分の摂取量は成人男性1日10グラム未満、女性8グラム未満を目安としてください。ちなみに、血圧が高めで心配な人は6グラム未満が目安です。
減塩の取り組みと並行して、多くの野菜や適量の果物を積極的に食べ、高血圧症の予防に効果的なカリウムを摂取するよう心がけてください。
同時に、高脂血症を予防するために、動物性脂肪の摂りすぎに注意し、合わせて魚や植物由来の脂肪をバランスよくとります。
アルコール(飲酒)も脳卒中や心臓病と深く関わっています。多量飲酒は控え、節度ある適度な量を守りましょう。日本酒に換算すると、1日平均1合程度が目安です。
その他、運動習慣を身に付け、適正体重の維持に努めるなど、脳卒中や心臓病の引き金となる肥満予防対策に努めてください。

今日から始めたい! 減塩の工夫10カ条

1 何にでもしょう油をかけるのはやめる。「かける」より「つける」に変える
2 味がもの足りないときはレモンや辛子を足す
3 減塩しょう油やだし割りしょう油(しょう油1:だし汁1)を使う
4 煮物は油を効果的に使うと風味が増す。また、油を使うと火が通りやすくなるので余分な煮汁をカットできる
5 薬味や香辛料で風味付けを(シソ、レモン、ゆず、唐辛子など)
6 漬け物や佃煮などの塩分の多いものは控える(漬け物は浅漬けにする)
7 みそ汁などの汁物は1日1杯を目安に(具だくさんにする)
8 麺類のスープは飲み干さずに残すこと
9 ラーメンは野菜たっぷりの五目ラーメンがおすすめ
10 魚は塩蔵より生魚を選ぶ

塩分を減らして高血圧予防

 塩分のとりすぎは血圧を上げ、動脈硬化を促進し、結果として脳卒中の要因にもつながります。注目したいのは塩分摂取量の約70%が調味料であること。そのうち3分の1がしょう油。調味料の摂取量に気を配り、食べ方の工夫をするなどして生活習慣病を予防に努めたいものです。まずは1gの塩分を減らすことから始めましょう。ちなみに、小さじ1杯のしょう油には約1gの塩分が含まれています。

脳卒中の初期症状(例)と緊急対応

1 右または左の半身(顔、手足)に力が入らない
2 半身の感覚がおかしい、感覚が鈍い、しびれがある
3 言葉がしゃべりにくい。ろれつが回らない
4 話そうとするが、言葉が出てこない
5 相手の話の内容がわからない
6 視野の半分(右または左)が見えない
7 頭痛がする
8 吐き気があったり、嘔吐する
9 ふらつく

緊急対応策

 自分自身や家族に脳卒中と疑われる症状が出たら、周囲の人に知らせると同時に、一刻も早く神経内科や脳神経外科など、脳卒中に対応できる医療機関を受診してください。
 救急車が到着するまでの緊急対応策としては、トイレや浴室で倒れた場合は体を拭くなどして、体が冷えないようにします。そして、呼吸しやすい体位をとり、吐いたものがのどに詰まらないよう、首と体を横向きにします。このとき、動かない方の手足を上にしてください。
 たとえ脳卒中と疑われる人の状態が落ち着いたとしても、目を離すことなく、救急隊などの助けを呼んでください。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは

 最近よく耳にするメタボリックシンドロームとは、腹部肥満に加えて、高血糖・高脂血・高血圧を複数併せ持った状態のことを指します。
 それぞれの症状は、単独では身体に与える影響は少ないものの、重複することで動脈硬化を進行させ、ひいては脳血管や心臓病につながることがわかっています。
 以下に示した1に加えて、2〜4のうち2つ以上に当てはまる場合はメタボリックシンドロームに該当します。

【メタボリックシンドロームの診断基準】
1 腹部肥満(内臓脂肪の蓄積)
・ウエスト周囲径   男性85cm、女性90cm以上
2 高脂血症(血清脂質異常)
・中性脂肪 150mg/dl以上
・HDLコレステロール値 40mg/dl未満
 以上2項目の一方または両方
3 高血圧
・収縮期血圧 130mmHg以上
・または拡張期血圧 85mmHg以上
4 高血糖(空腹時高血糖)
・空腹時血糖値 110mg/dl以上

定期的な健診でリスクを回避

 食生活の改善や運動習慣の定着はもちろんですが、定期的な健康診断も欠かせません。健診を受診すると、高血圧症、高脂血症、耐糖能異常などを早期に発見できるほか、健康の基本である適正体重を把握することができるからです。
「特定健康診査」は県民の健康生活をサポートする取り組みの一つで、生活習慣の改善が必要な人を早期に発見し、特定保健指導で生活習慣改善のポイントをアドバイスしてくれます。
この検査の目的そのものが、生活習慣病になる前の段階で病状の進行を食い止め、より健康な状態に戻すことにあります。健康的な生活を送るために欠かせない検査は、生活習慣病の早期発見と予防に役立ちます。
検査の際、「要指導」と判定された場合は速やかに保健指導を受け、生活習慣の改善に努めます。もし、「要医療」と判定された場合は、該当する医療機関を必ず受診してください。
こうした健診は、定期的に受けることで検査結果の年次比較が可能となり、異常値に近づく前に生活習慣を見直せるという大きなメリットもあります。
検査結果は内容を深く理解し、健康生活の指針として大いに活用しましょう。

ちょっと気になる医療のはなし

緊急時に人命を救助。誰でも使える医療機器

 AED(Automated External Defibrillator)とは自動体外式除細動器のことで、心臓がけいれんしてポンプ機能を失ったとき、電気ショックを与えて正常な働きをとり戻すための医療機器です。
 平成16年7月より、これまでは医療従事者しか使えなかった医療器機が、一般市民でも使用できるようになりました。操作は音声ガイドに沿って行うためだれでも簡単に使用でき、一般市民がAEDを使用して救命した例も少なくありません。
 AEDは病院や診療所はもちろん、学校、公共施設、空港、駅などをはじめ、人が多く集まる場所への設置が進んでいます。

受動喫煙の害

たばこを吸わない人が、室内などの場所で他人の
たばこの煙を知らず知らずのうちに吸わされることを
「受動喫煙」といい、大きな社会問題となっています。

 たばこの煙は、喫煙者が吸い込む「主流煙」と、火がついている部分から立ち上る「副流煙」に大別されます。
 フィルターを通過していない副流煙は、主流煙よりも有害物質を2〜4倍多く含んでいるというから驚きです。発がん物質も確認されるなど、周りの人の健康にも悪影響を及ぼすことがはっきりしています。
 平成21年度の県民健康・栄養調査によると、県民の喫煙習慣者は男性が42・3%、女性が10・2%に上っています。
 前回の調査値と比べると幾分減少し、受動喫煙の機会も全体的に見れば少なくなりましたが、その一方で、飲食店・職場・遊技場・家庭における受動喫煙の機会が他の場所と比べて依然として高いのが気になるところ。喫煙者のマナーやモラルがこれまで以上に問われていることを肝に銘じておきたいものです。

たばこの害、こんなに危険!

・夫が1日20本以上たばこを吸う場合、妻(非喫煙者)の肺がん死亡率は非喫煙者夫婦の約2倍にも。
・妊婦の受動喫煙により、生まれてくる赤ちゃんが低体重になるリスクが高まる。
・母親が喫煙している場合、子どもがぜんそくになる危険性は、喫煙しない母親の2.5倍にも。家庭内の喫煙は子どもへの影響も大きい。


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