上都賀郡市医師会 横瀬 宏允 会長

広域に市民の健康を守る

上都賀郡市医師会は合併後の日光市を含む広大な地域に住む住民の健康を守る。
有数の観光地であり、また寒冷地、山間地でもあるため、さまざまな困難も多い。
横瀬宏允会長は、まず、食生活を見直す必要があることを強調する。

横瀬宏允会長
准看護学校を運営
■上都賀郡市医師会の概要をお聞かせください。

 上都賀郡市医師会は南部地区が鹿沼と西方、北部地区が合併後の日光市です。設立は昭和22年の12月。平成23年12月の時点で会員数は180人余りで開業医と勤務医が約半々ずつで構成されています。市民の健康と生命を守る目的で、医師会の中に20の委員会を設けて、さまざまな活動に取り組んでいます。
救急医療に関しては、南部地区は鹿沼市の委託を受けて、上都賀総合病院、御殿山病院、西方病院が2次救急病院として対応しているほか、外科系急患の休日昼間は7医療機関が当番制で当たっています。北部地区は日光市からの委託で、森病院、今市病院、川上病院、獨協医科大学日光医療センター、日光市民病院が2次救急に対応する病院となっています。
休日夜間急患診療には、南部が鹿沼市民文化センターにある「休日・夜間急患診療所」に医師を派遣し、北部では今市保健福祉センター内の「休日急患こども診療所」で、輪番制で診療に当たっています。そのほか、特定健診、がん検診、予防接種、学校医、産業保健活動などを行っています。
また、医師会として准看護学校を運営し、会員が各専門分野の教育にあたっています。卒業生の8割は地元に就職し、2割が進学しています。不景気な世の中なので、資格を取って役立てようという目的意識を持っている人たちが集まり、熱心に勉強しています。近年は倍率も高くなる傾向があります。子育てが終わってから勉強したいという人も多く、年齢層もさまざまです。学校の経営は大変厳しいものがありますが、関係各機関の補助をいただきながら何とかがんばっています。

基幹病院との連携進む

 市民向けには地域保健活動の一環として、公開講座を開いています。エリアが広いので、南部、北部でそれぞれに開催しています。生活習慣病などのほか、うつ病や認知症など、年度によってテーマを変えて取り組んでいます。作家で地元鹿沼出身の柳田邦男先生や、大江健三郎先生に来ていただいて講演をお願いしたこともあります。

上都賀郡市医師会事務局
■医師会としてかなり広域なエリアをカバーしていますね。

 日光市は栃木県の約4分の1の面積を占めています。ここに鹿沼が加わると非常に広域です。遠距離なので往診などの際や、会議などで集まるにも時間がかかります。
このエリアの基幹病院は、南部は上都賀総合病院です。スタッフが充実しており、大学病院と同じような機能を持っていて、地域の先生たちとの病診連携が進んでいます。ほかにも獨協医科大学病院と自治医科大学附属病院にも近いので、これらの医療機関とも連携を形づくっています。
北部の基幹病院は獨協医科大学日光医療センターです。ここではステントという医療機器を用いて、心臓の冠状動脈の血栓を治療する方法が好成績を上げています。この周辺は観光地ですから、旅先で心筋梗塞などで倒れた場合でも、回復して帰れる事例が多くなっています。大学病院に搬送しなくても24時間体制で高度な治療が受けられる体制が整い、住民にとっては心強いところです。このことによって、近年は心筋梗塞による死亡例が減ってきています。脳卒中などの脳疾患への対応は、獨協医科大学病院のドクターヘリが栃木県全域をカバーしていますので、そちらにお願いする形を取っています。
この地域の特に北部は山岳地帯なので、毎年、キノコ採りに入った人などによる滑落事故などが多かったのですが、原発事故による影響で山に入る人が少なかったらしく、あまり発生しませんでした。
また、最近、在宅医療の必要性が言われていますが、広域であること、さらに旧藤原町などでは医師が足りず、在宅で診る場合の課題になっています。

食事見直し塩分制限を
■今後考えておられる取り組みなどはありますか。

 当医師会として特段の事業を考えてはいませんが、医師確保の面から基幹病院の医師をさらに増やしてほしいというのが、われわれ開業医の希望です。そうすれば病診連携はさらに進むでしょう。

上都賀郡市医師会が運営する准看護学校
■寒冷地という土地柄ですが、地域の人たちに健康づくりで訴えたいことはありますか。

 栃木県は高血圧や脳卒中の診断が全国的にみても最下位の状態です。何よりも塩分の制限をしなければなりません。栄養士、看護師、保健福祉センターの職員などが指導しても、その時は話は聞くけれども、実際には各家庭で非常に高濃度の塩分を摂取しているのです。家庭内の食事を見直さなくてはいけません。
お椀のみそ汁1杯には、2グラムの塩分があると言われます。すると朝昼晩で6グラムくらい摂取していることになります。このほか、練り製品などにも塩分が入っています。栃木県は塩分摂取量が多いというのは知ってはいても、舌で覚えてしまって薄いと感じてしまうのでしょう。しょうゆの使用量も多い。

子どもたちに肥満の傾向

 自分は降圧剤を飲んでいるので、大丈夫だと考えて、食生活を改善することなく、いつまでもしょっぱいお新香を食べていたりするのです。労働をして汗をかいた後なら塩分を取ってもいいのですが、最近はそういう職場はほとんどありません。自分で早朝の尿の塩分測定などができれるようになれば、各自がもう少し努力するようになるかもしれませんね。
それから何でも食べられる飽食の時代で、肥満が増えています。特に子どもたちの体重が増えてきているのです。最近は部活に入っていない子が多くて、運動不足になっているのです。家に帰って食べては寝て、ゲームをやってと。もっと運動をする機会をつくらないといけないと思いますね。


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