芳賀郡市医師会 栁田 通 会長

厳しさ増す医療機関経営

急患センターの運営を通して地域の健康を守る芳賀郡市医師会。
栁田通会長は厳しくなりつつある医療機関経営の現状を憂慮する。
地域住民の健康づくりには、国民皆保険を守り、健全な経営を維持することが
不可欠だと言う。

栁田通会長
医療従事者対象に勉強会
■芳賀郡市医師会の活動内容などを教えてください。

 芳賀郡市医師会は合併した二宮町を含む真岡市と、益子町、茂木町、市貝町、さらに芳賀町で構成されています。医療機関は平成23年12月時点で80あります。数年前に芳賀地区に急患センターができました。月曜日から土曜日の午後6時半から午後9時まで、休日は午前9時から午後9時まで、急患を診察しています。重症の方は芳賀赤十字病院などの2次救急の医療機関に紹介する体制になっていて、この地域の皆さんには心強く感じていただけていると思います。ただ、最近、患者さんがやや減少傾向にあり、財政的には大変厳しい状況です。

■地域の医療の状況をどのようにみておられますか。

 診療科目としては、内科や小児科、整形外科、耳鼻科、眼科、皮膚科などは足りないという感じではないと思いますが、外科系の先生が少ないので、外科系の診療所が開設されればと思います。

■この地域に特徴的な健康上の問題点はありますか。

 私は開設して28年です。開設当時も心臓疾患、脳疾患は多かったのですが、今ほどではなかったように思います。現在はかなり増えていて、薬も心臓疾患、脳疾患の製剤を使っている人が非常に多くなっています。私たち外科系の医師は手術をしますので、抗凝固薬などを飲んでいる患者さんは手術後に出血をきたすおそれがありますから、絶対に医療事故を起こさないように注意をしなければなりません。医師会では月に2〜3回は、高血圧、糖尿病などのほか、流行期にはインフルエンザの話、さらに医療にかかわる問題点などについて、医師と医療従事者向けの勉強会を開いています。

芳賀郡市医師会が運営する急患センター
市民公開講座も好評
■地域住民に呼びかけているようなことはありますか。

 市民公開講座を年に3回行っています。がんをはじめ、栃木県に多い心臓疾患、血圧、脳疾患などについて、大学病院の先生などに講演していただいています。多くの市民が参加してくださって、大変好評ですので、今後も継続していきたいと思います。

■今後、医師会として取り組みたいと考えていることは
ありますか。

 医療連携の問題と在宅医療が課題になっています。参加するための条件が厳しくて、在宅診療の医療機関が少ないのが実情です。24時間拘束されますので、1人で診療している先生方は特に難しい
状況となっています。国は財政難を理由に金のかからない医療を目指しているので、医療機関にはかなりの負担を強いる医療政策が行われていますから、医療経営は厳しくなっています。もっと条件を緩和して医療機関の多くが参加できる環境づくりが必要だと思います。

医療制度を守るために
■しかし、一方では急速な高齢化が進んで医療費の増大も続いていますね。

 先ごろ、政府から受診時に患者さんから100円の負担金を徴収する話が出ました。この100円は医療機関でなく全て国庫に入る仕組みです。国はこれで2000億円の収入増を見込んでいたようですから、2200億円の社会保障費を削減した小泉構造改革の再来になるということです。日本医師会も私たちも反対の活動を行い、とうとう国も断念しました。しかし、国はこれであきらめたわけではありません。患者さんの負担が増
えますと、受診の抑制になって重い病気も見逃されてしまいます。
 現在、わが国には世界に誇れる国民皆保険制度があります。しかし、2年前に急浮上しましたTPPを批准すると、アメリカの医療資本が参入して自由診療が広がり、日本の国民皆保険制度は壊れることになると思います。このことでは日本医師会は当初から警鐘を鳴らしてきました。また、消費税の問題にしても、医療機関だけが消費税を転嫁せずに全て負担していますから、10%にでもなりましたら、医業経営にかなり重い負担が押しつけられることとなります。

■医療費の増大を抑えるためにも予防医学が大切になると思いますが。

 市民公開講座の場などで医師による無料健康相談を行っています。市町民の皆さんには大層好評ですので、今後も続けてまいりたいと考えております。

■医師会には新たに先生方の加入はあるのですか。

 新規開業する先生方は結構いらっしゃると思うのですが、国による医療に対する締め付けが年々厳しくなっていますので、思ったような医療経営ができずに悩んでいる先生方は多いのではないでしょうか。収支バランスを考えて設備投資をしないと、医業経営はそれほど簡単ではない状況です。

人気がある市民公開講座
大災害時の対応が課題
■地域の患者さんの命を預かりながら経営も考えていかないといけない。大変ですね。

 医療機関が1軒でも倒産しますと、それで影響を受ける患者さんがたくさん出てきます。医業経営をしっかり把握して、地域の患者さんに貢献していかないとなりません。ただ、それにはやはり政府がもう少し、社会保障にお金を回さないといけないと思います。
 消費税が10%になると、新しい医療機器を購入しようとしても、消費税を負担している医療機関は大変な負担になります。患者さんが安心して受診できるように、国民皆保険という世界に類のない医療を守り、患者さんの健康を守ることが、私たちの役割だと思っています。

■今回の東日本大震災の影響はどうですか。

 この地域は被災地でもあります。医療機関も被害を受けたところがたくさんありました。その修繕にもかなりの出費を要しました。正直、今回のような大きな災害は想定しておらず、地震への対策は手薄になっていました。
 どのような対応をしなければならないか、よく先生方と話し合って、いざという時に迅速な対応ができるようにする必要があると痛感しました。今後も自然災害の起きることが考えられますから、その時は医師の派遣などで協力できるようしておかなければならないと考えています。

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